『出版警察報』第百拾貮號(第112号)より 小林秀雄「蘇州」の削除箇所
『新潮』2013年3月号の山城むつみ論文128ページには確かに「その第一〇一号に一九三八年の四月、五月、六月の三カ月間の出版物取締の状況が報告されている」とあるのですが、私が見た不二出版の複製版では第百拾貮號(第112号)に収録されていました。複製版で号数が変わるはずもないのですが、一応、別の版で再確認する必要がありそうです。...
View Article石橋湛山「軍備縮小会議」(『婦人之友」1932(昭和7)年2月号)
本年9月3日に紹介した、石橋湛山の戦前の軍備撤廃論をこのたび入手しました。 「時事三題」中の「三、軍備縮小会議」という題名です。 ジュネーブでの軍備縮小会議を背景に、世界各国が皆、「おれは泥棒ではない、唯だ泥棒を防ぐ為めに軍備を設くるのだ」と主張しながら軍備を拡張し、結果的に国際間の危機を高めている矛盾を指摘しています。...
View Article『出版警察報』一気読み
不謹慎かもしれませんが、下手な文学史や文芸時評よりはるかに興味深い読書体験でした。 日中戦争や太平洋戦争のさなかにも、弾圧に抗して反戦や反ファシズムを訴える人々は大勢いたことを、あらためて思い知らされました。その一方では、対米開戦前に先走って侵略論を書き、検閲にあったなんて例も多いのですが。
View Article『出版警察報』に取り上げられた『大洋』誌
文藝春秋社の『大洋』という雑誌は、国会図書館に置いてないこともあり、これまで全体像をつかめていなかったのですが、戦時下の『出版警察報』にかなりくわしい動向が書いてありました。1942(昭和17)年の記事より一例を。 ※...
View Article河内紀「『食道楽』以前以後―明治の実用小説家・村井弦斎の夢(下)」
『月刊百科』(平凡社 1987年8月号)。国会図書館の雑誌検索で発見しました。 この河内紀(かわちかなめ)氏の文章ははじめて読んだのですが、弦斎の作品をたんねんに読み込んでいる印象を受けます。 ※ はっきりと婦人読者を意識して家庭小説を書きはじめた弦斎の小説に登場する女性たちが、しかし滑稽なほどに明るく元気に満ちあふれ、いかにも颯爽(さっそう)としているのはなぜなのか。...
View Article『日本文学報国会 大日本言論報国会 設立関係書類 上巻』(関西大学図書館刊行 平成12年)
日本文学報国会の設立届け、事務局長や理事たちの履歴書(一部直筆)、昭和十七・十八年度の収入支出などを採録した貴重な資料集でした。今すぐ役に立つというものではありませんが、ひとまずコピーしておきました。 ただ、文学研究者としてはこういう資料もさることながら、関係者の生の声を聴きたいと思うのです。自分たちがやっていることが戦争の勝利に役立っていると、彼らは本当に思っていたのでしょうか。
View Articleかわいそうな秋
『サザエさん』の、アナゴさん花沢父ちゃんに続く第三の若本キャラ、静岡のおじさんが登場しました。 「みかんが待っている」と言い残して去っていったナイスミドル。詩人です。ネットで調べたらフネさんの家系だそうで。道理でお茶目。
View Article村井弦斎「大発明」
河内紀氏も紹介していた、村井弦斎の短編「大発明」。「庚寅新誌に連載(明治二十六年二月ー三月)された」とのことですが、同誌はたぶん明治新聞雑誌文庫あたりでないと閲覧できないので、ひとまず近代デジタルライブラリーで読める短編集『文車』(1906(明治39)年刊)から引用します。...
View Articleスピノザ『国家論』(畠中尚志訳 岩波文庫 1976 原著1677) 予告
だいぶ前に買った本ですが、ふと読み返す気になりまして。 まず今回ははじめのほうの気になったとこだけにします。スピノザはホッブズと同じく、「人間は、本性上互いに敵である」と想定しており、その前提にたって個人の自衛権や、自衛のための戦争を国家が行う権利を認めています。が。 ※...
View Articleスピノザ『国家論』(畠中尚志訳 岩波文庫 1976 原著1677) その1 マキャベリ編
前回引用し、スピノザの国家論がマキャベリに似てるとか私が書いた箇所のすぐ後で、スピノザ自身がマキャベリについての弁護を述べていました。 マキャベリは「確かに自由の味方」であり、マキャベリの君主論は絶対君主制の擁護ではなく、絶対君主制の危険を示すために書かれたのだという趣旨です。 ※...
View Articleスピノザ『国家論』(畠中尚志訳 岩波文庫 1976 原著1677) まとめ
最後まで読み返したのですが、第六章以降は君主国家や貴族国家のこまごまとした規定の話(顧問官は5人までとか、議員は5000人までとか)が続くばかりなので、ここらでまとめに入ろうかと思います。...
View Article村井弦斎『日の出島』「高砂の巻」その2 薫少年の小説「朝日丸」
下宿に押しかけてきた不良書生たちに、書きかけの小説を見つかってしまった馨少年。雲岳女史に大声で朗読されるはめになります。 南北朝時代。捕虜になった南朝の武将、本間資氏(ほんますけうじ)は、息子の朝日丸もろとも北朝の赤崎基重(あかさきもとしげ)に捕えられます。...
View Article村井弦斎『日の出島』「高砂の巻」その3 「アルミニユーム」
「アルミニユームは鉄よりも非常に軽くつて鉄よりも非常に堅い鉱物だし、到る処の土中には採り尽くせぬ程ある物だから、それを鉄に代用する時代が来れば鉄の時代は変じてアルミニユームの世界となる。今日は亜米利加に一ヶ所製造所があつて専売特許で製出して居るがあれを非常に廉(やす)く精製し得るの新発明が出来て一方には我身の蓄電池が出来れば鉄道列車を運転するに機関車の様な重くして不便なものを用いるには及ばん」...
View Article村井弦斎『日の出島』「高砂の巻」その4 弦斎落語「金本位」「葉煙草専売」「臥薪嘗胆」
この村井弦斎ってえ御仁は、何かといえば「文明流」に「改良」するのが大好きなお人で。そんな弦斎の改良落語、さわりの部分だけ紹介します。 ※ ・「金本位」 (金本位制の意味がわからず、世の中は金ばかりになると思い込んだ夫婦。ふきんやぞうきんを集めた末に) 婦(かゝあ)「寧(いつ)その事、和郎(おまへ)を箱へ入れて仕舞つて置かう」 夫「何故」 婦「だつても和郎は余つ程剽キンだもの」...
View Article村井弦斎『日の出島』「高砂の巻」その5 太陽エネルギー
「僕はエネルギーの事を研究して居るよ、エネルギーの事は随分面白くつて世界の万象一としてエネルギーの法則を外れる者は無いがその代り之を百事百物に就いて研究するには到底一人の力で成し得られる者で無い」 (近代デジタルライブラリー 『日の出島』「高砂の巻」101/172) ずいぶん手間取りましたが、ようやく『日の出島』の本題が出てきました。...
View Article村井弦斎『日の出島』「高砂の巻」その6(最終回) 「竹の産物」
わけあって静岡県興津を旅するお富嬢は、汽車の踏切に飛び込もうとした自殺志願者を助けます。そこで聞かされたのは、発明の世紀の暗い一面でした。 ※ 「此の静岡県は竹細工の名所で今では竹製の帽子などを外国へも輸出致します。 (略。竹の新たな利用法と販路を考えた末に)...
View Article『清須会議』(予告)
JRの駅名は確か「清州」でしたが、こういう題の映画なので。 秀吉が三法師ぎみ(信長の直系の孫)をだっこして柴田勝家らを一喝する話、のはずなのですが、公式サイトによるとこの映画では秀吉は信雄(次男)と提携しているようです。三谷幸喜監督の手腕に期待です。
View Article『清須会議』
織田家の本拠地が清須(清州)城だった時代と安土城時代では、家臣の総数も大幅に違うわけです。 で、三人相部屋に入れられた佐々成政らしき武将が、清須城の狭さをぼやくシーンがありまして。そういう、「重大な事件がやたら狭い空間で頻発することによるドタバタ」狙いなのかと思ったら、そういうわけでもなかったようです。...
View Articleロールズ『正義論 改訂版』(紀伊国屋書店 2010 原著1999)その1
どうも村井弦斎について書く気分になれないので、ちょっと逃避してみることにします。 まず、訳者あとがきより、著者ロールズの人となりを。...
View Articleロールズ『正義論 改訂版』(紀伊国屋書店 2010 原著1999)その2
第六章「義務と責務」の第56節「良心的拒否の定義」より要約してみます。 ※ (「良心的拒否」の例として)軍務に就くことを渋る平和主義者のケースや、下された命令は戦争に適用される道徳法則に明白に反するという考えからその命令に従うことを嫌う兵士のケースがある。(略)...
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