ロールズ『正義論 改訂版』(紀伊国屋書店 2010 原著1999)その3
私はこの『正義論 改訂版』全編を通読したわけではありません。 しかし、戦争に関するロールズの意見はほぼこの第六章、とりわけ第58節「良心的拒否の正当化」で尽くされているように思われます。 ※...
View Article村井弦斎『日の出島』「住の江の巻」その1 チョコレートを食べる雲岳女史
ちょっとロールズで疲れたので、やわらかめの話にします。 ついに結婚話が持ち上がり、故郷の静岡県に帰った雲岳女史。旅館で西洋通ぶって「チーは要らん。カツフヰーとミルクとシユガァーを貰い度(た)い」と注文したところ、出てきたのはチョコレートでした。当時はお湯に溶かして飲み物にするのが一般的だったようですが、それを知らない雲岳女史は・・・。 ※...
View Article村井弦斎『食道楽』(1903)中のチョコレート
『日の出島 住の江の巻』(1898)から5年後の『食道楽』で、チョコレートはどう扱われているか。気になって岩波文庫巻末の索引を引いてみました。 下巻に4か所ほどあるチョコレート菓子の料理法は、いずれも「削ったチョコレートを牛乳(または水)で煮て」とあり、固形チョコレートをそのまま食べる記述はありませんでした。...
View Article村井弦斎『日の出島』「住の江の巻」その2 雲岳女史の婚礼演説
実は地方旧家のお嬢様だった雲岳女史。お富嬢のフォローもあってどうにか縁談がまとまったのですが、無事に終わるはずもありませんでした。婚礼の席で「さて諸君」と演説を始めます。 「新家族の帝王たるものは何である、疑もなくその家の花嫁である」 銀河万丈ボイスで再現されそうな名調子です。「強健なる国民」とか言ってますし。...
View Article村井弦斎『日の出島』「住の江の巻」その3 「太陽燈」「浮世の様」
だいぶ前から予告されてましたが、ついに石橋学士の太陽燈が完成しました。お富嬢率いる関東発明会の資金援助のもと、商品化に入ります。(近デジ117/177) 十銭出せば一年も二年も壊れることはなく、一夜付け通しても費用は三厘にもならない すぐれ物(なお、雲岳女史の演説入場料は三十銭でした)。...
View Article村井弦斎『日の出島』「住の江の巻」 その4(最終回) 「太陽熱」
下の箇所を拾い読みしたのは2011年の7月19日でした(http://blogs.yahoo.co.jp/fktouc18411906/5137889.html)。たどりつきました。 ※ 「その大発明とは何です」 雲野「それは世界に向て熱を供給するのだ。即ち石橋君の研究材料を半分借りて太陽の熱を吸収保存し、それを以て今日の石炭や薪炭油電気あるとあらゆる発熱材に代用させるのだ」...
View Article村井弦斎『日の出島』「富士の巻」その1 戦艦道楽
実在の新造戦艦「富士」を雲野学士らが見学し、その最新技術ぶりをひたすらレポートする異色の巻です。 ついに弦斎のやる気スイッチが入ったのか、わがままを通せるほど報知新聞社内での地位が上がったのか。『食道楽』のお登和嬢を思わせる饒舌で語りたおします。 ※ 第一 頓数の多き事 第二 速力の大いなる事 第三 機関の新式精巧なる事 第四 十二伊(いんち)砲の新式鋭利なる事 第五...
View Article村井弦斎『日の出島』「富士の巻」その2 キッス
太陽燈反対の一味にそそのかされ、石橋学士の前に現れたお金夫人。西洋人の夫婦は人前で抱き合って接吻をすると教えられ、実行しかけたとこでお富嬢に阻止されます。 ※...
View Article『ビッグマンスペシャル 連合艦隊 [上巻]勃興編』世界文化社 1997
太平洋戦争期の軍艦の本はいっぱいありますが、日清・日露戦争期のは意外とないものです。 上掲書の66ページより、戦艦富士のスペックを。 戦艦「富士」 常備排水量: 12、533トン 垂線間長 : 113.40m 全幅 : 22.45m 主機械・缶: レシプロ2基、円缶10基 出力・軸数: 13、500馬力、2軸 速力 : 18.25ノット 航続力 :...
View Articleヤウス『挑発としての文学史』(予告)
この手の文学理論書は、学生時代にむさぼるように読み、さして身につかないまま記憶の彼方に消えていたわけですが、わけあって近日中に熟読せねばならないはめになりました。あまりご期待せずにお待ちください。
View Article村井弦斎『日の出島』「富士の巻」その3 「金十匹」
今日はCiNiiがお休みなので、また日の出島に戻ってみます。 ふつつかぶりが目に余り、ついに華族の家に奉公して礼儀作法を学ぶことになったお金(きん)夫人。さっそく「お上」からご祝儀の「金十匹」を賜ります。 ※...
View Article村井弦斎『日の出島』「富士の巻」その4 「新華族」
「金十匹」の挿話より少し前、お金夫人が奉公先を探す時点の章です。 口入れ屋によると、近頃(明治30年代)には華族の質も低下したそうで。 ※ 「私どもなんぞでは毎度華族さんへ人を入れるが此頃は華族さんが沢山になつたから仲には随分妙な家があるぜ (略。主な得意先は) 一番多いのが男爵でそれから子爵までは沢山来るがモー伯爵となると中々慶庵(注...
View Article自然主義じゃないけどリアリスト
村井弦斎の小説を実際にお読みになった方なら、あるいは納得していただけるかもしれません。 弦斎の作品は自然主義以前の手法で描かれておりまして、個々の人物はどうも戯作的というか、あんまり文学らしくないんですけど。...
View Articleハンナ・アーレントより
2年ほど前のブログでも使いましたが、大事なことなのでもう一度引用します。 ハンナ・アレントは共産主義者から転向した保守主義者についてこう述べています (「エクス・コミュニスト」 1953)。 ※...
View Article長谷川町子物語
サザエさん放送45周年を記念したテレビドラマです。 エピソードのほとんどが「サザエさんうちあけ話」由来なのは別にいいのですが、同書の持つ、どんな悲惨な事態もユーモアに変えてしまう、あの長谷川町子特有のセンスが発揮されていないのは残念でした。田川水泡先生の人物像も、もう少し掘り下げてほしかったところです。
View Article村井弦斎『日の出島』「富士の巻」その5 「画の効用」
村井弦斎が絵画芸術について語る、珍しい一場面です。 正確には、お富嬢に肖像画のモデルを頼みに来た、馨少年の兄の貢君のセリフです。 ※ 我邦にも大分油絵が盛(さかん)になつたが更に油絵らしい大作も見受けない、それと云ふのが畢竟油絵の趣意を誤解して画題になるべき物を選ばないからだ、風景と云へば田舎の百姓家でも描き度(た)がり、人物と云へば守り子かお三どんの様なものを選ぶ、(略)...
View Article西原と橋本
もしかしたら、以前から出てたのかもしれませんが。 中島に次ぐカツオの級友、西原と橋本が今回はやたらクローズアップされてました。今後、ドラえもんの安雄とはる夫のごとき位置を確立できるかどうか。
View Articleチャールズ・エドワード・ストウ著 鈴木茂々子訳『ストウ夫人の肖像』 ヨルダン社 1984(原著1889)
『アンクル・トムの小屋』の作者、ハリエット・ビーチャー・ストウの、息子による伝記です。 『アンクル・トムの小屋』という作品が火をつけた奴隷解放運動が、南北戦争を引き起こした(リンカーン談。冗談まじりにもせよ)ことについて、作者自身はどう思っていたのか。そのへんを知りたくて読んでみました。 以下、「第16章 南北戦争 一八六〇-一八六五」より、ストウ夫人の言葉を引用します。 ※...
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