格付けされる文学のことなど
私が「平和主義小説」と認定した小説やその作者は、一般的な文学史ではなぜか「通俗的」というランクに格付けされていまして。それに対して書くべきことは大量にあるのですが、8月20日までにまとまるかが問題です。
View Article清水真木『忘れられた哲学者 土田杏村と文化への問い』(中公新書 2013)
忘れられた哲学者(私は覚えてます)こと、土田杏村(つちだきょうそん 1891~1934)を再評価する新書です。(続く)
View Article土田杏村「日本は何処へ行く?」(『経済往来』1932(昭和7)年4月号)
そもそも土田杏村全集からして、いなかの図書館には置いてないのです。 かろうじて、流動出版『《復録版》昭和大雑誌・戦前篇』(1978(昭和53)年)という本に上記の時事論文が採録されていまして、ひとまずここから入ることにします。...
View Article河合栄治郎「混沌たる思想界」(『中央公論』1934(昭和9)年2月号)
引用は『近代日本思想大系 35 昭和思想集Ⅰ』(筑摩書房 1974)によります。 本当は土田杏村目当てで借りてきたのですが、河合栄治郎(かわいえいじろう 1891~1944 杏村と同年生まれ)のこの論文が圧倒的に面白かったので、先に紹介させていただきます。...
View Article河合栄治郎「混沌たる思想界」より、その自由主義観。
河合栄治郎は自由主義を、「一面にファッシズムに対抗すると共に、他面に於てマルキシズムに対抗する」ものと位置づけていました。 ※...
View Article土田杏村「転向没落問題・自由主義・戦争論」(『経済往来』1933(昭和8)年8月号)
河合栄治郎の「混沌たる思想界」の半年前に出た、土田杏村の時事論文です。 直接に河合を名指し批判してはいないのですが、「自由主義」への批判には力を入れており、読み比べる価値はあると判断しました。 ネット上でも読めますが、今回の引用は、『近代日本思想大系 35 昭和思想集Ⅰ』(筑摩書房 1974)によりました。 ※ 私(引用者注...
View Article赤いたぬき
ある方のブログに先を越されたプロジェクト、遅ればせながら試してみました。 赤いきつねと緑のたぬきのフタを開け、具とスープを交換する。 まず赤いたぬきの方ですが、このまま商品化していいくらい違和感のない味でした。 どん兵衛からはでてるわけだし。 緑のきつねはセロテープで封印。昼食はこれで決まりです。
View Articleそして緑のきつね
緑のたぬきのそばに油あげ。こちらは想定どおりの味でした。「紺のきつねそば」はもうあるし。 美とか感動には、意外性という要素が不可欠だと思うのです。小説でも絵画でもゲームでも、最初に出会った時の感動は二回目以降にはどうしても薄れるものです。
View Articleマスオ、才能開花
(タイトルには読点が入るようなので直しました。『サザエさん』7月21日放映分の三話目です) あの全自動卵割り機話(父さん発明の母)以来、久しぶりの発明ものです。 サザエさんからカツオブシ削りを頼まれて何かに目覚めたマスオさんが、グルグルダシトールの改良電動型みたいなやつを設計するのですが、小さくなったカツオブシはどうするの、と言われて断念。...
View Article土田杏村「河上肇論」(『中央公論』1929(昭和4)年7月号) 雑感
オタどんさまも関心を持たれたようなので、もう一本だけ土田杏村を読んでみることにします。言及されている河上肇その他と読み比べたわけではないので、ひとまず雑感とさせていただきます。引用は例によって、『近代日本思想大系 35 昭和思想集Ⅰ』(筑摩書房 1974)より。 一言で言うと、「河上氏はマルクス・レーニン主義を理解していない」という方向の批判です。 ※ これ(引用者注...
View Article河合栄治郎「マルクスより出でてマルクスを克服するもの」(『中央公論』1929(昭和4)年1月)
『近代日本思想大系 35 昭和思想集Ⅰ』(筑摩書房 1974)より。 誤解を招きそうな題名ですけど、マルクスを擁護する内容ではありません。「筆者はマルクス主義者ではない。過去に於て之に反対し、今後も亦之に反対を継続するであろう」というのが河合栄治郎の立場です。 ただし、唯物論(マルクス主義)にとってかわりつつある国家主義についても、河合は容赦のない批判をしています。 ※...
View Article佐野学・鍋山貞親「共同被告同志に告ぐる書」(『改造』1933(昭和8)年7月号掲載)
いわゆる転向声明(=共産主義やめます宣言)の最初のものとして有名な文書です。同年の2月20日に『蟹工船』の小林多喜二が虐殺されるなど、同主義への弾圧が強まっていたこともあり、この転向声明についで「一ヶ月のうちに獄中被告の三五パーセント、一三三名が転向した」そうです(筑摩書房『近代日本思想大系 35 昭和思想史Ⅰ』の「解説」(松田道雄) 480ページより)。...
View Articleロック『統治論』における無抵抗主義批判
ロックという思想家の最大の功績は、君主に対する抵抗権を認めたことでした。 王権神授説の論者バークレィ(1546~1608)の、「抵抗は畏敬の念をもちつつなされなければならない」「抵抗は復讐や処罰を伴ってはならない」という説に対して、ロックは以下のように反論します。 ※...
View Articleきのこの醤油バタースパゲティ
国会図書館、6階食堂の新メニューです。550円という値段、国会図書館で過ごす貴重な時間を費やす価値は十分にあります。 見た目はミートソースのソースを少し黒くしたようなものですが、味は「どんなにか美味しゅうございましょう」と、お登和嬢も認めそうな出来です。そういえば、食道楽にスパゲティはなかったような。
View Article文学研究者にとっての幸不幸
文学研究者にとっての幸福とは、価値のある研究を産み出すこと。 不幸とは、価値のある研究を産み出せないこと。それにつきるようです。 出来れば、幸福の見本を示したいものです。
View Article松井慎一郎『河合栄治郎 戦闘的自由主義者』(中公新書 2009)より 晩年
戦時下にあってもファシズム勢力との法廷闘争を続けた河合栄治郎。なのですが、今回は残念な話です。 公判が開始される直前の1941年2月、河合は『国民に愬う』という論文を書きました。米英との戦争を不可避とし、日独伊三国同盟という「道徳的義務」の貫徹を愬(うった)えた内容です。...
View Article河合栄治郎と『経済往来』誌、日本評論社(松井慎一郎『河合栄治郎 戦闘的自由主義者の真実』)
河合栄治郎や土田杏村が論文を寄せた『経済往来』という雑誌は、前から気になっていました。松井慎一郎『河合栄治郎 戦闘的自由主義者の真実』(中公新書 2009)にその由来が載っていたので引用させていただきます。 ※...
View Article河合栄治郎のソ連観(松井慎一郎『河合栄治郎 戦闘的自由主義者の真実』(中公新書 2009)より
以下は河合栄治郎「コミンテルンの崩壊」(『社会政策時報』一九三三年三~五月号)の概要なのですが、原文未見につき松井慎一郎氏の要約によります。 まず、河合が深く共感したという、ローゼンベルク『ボルシェヴィズムの歴史』(1932)の内容から。 ※...
View Article暴力と無抵抗の間の、非暴力的抵抗
戦争を止めるための戦争、暴力を止めるための暴力は許されない。 しかし、暴力に対して無抵抗であるのは、結果として暴力を認めることになる。 上記二つの要請から、非暴力的抵抗というものが必要になってくるわけです。 平凡な結論ですが、上記の立場を貫くのは困難です。個人でも国家でも。
View Article『カツオくん(星を見上げて)』
先代カツオこと故・高橋和枝氏による、磯野カツオという男のかしこさ・美しさ・たくましさを歌い上げたキャラクターソングです。劇中で聞いたわけではなく、最近ネットでその存在を知りました。 ギャグ要素はあまりなく、バラード調の曲とあいまって、いつか自分の時が来ると確信するカツオの姿がひしひしと伝わってきます。...
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