流れを変える文学に向けて
ネットをやってると実感しますが。 憎悪というものは実にたやすく連鎖・増幅するものでして。 悪意があるわけでもない言葉が悪意にとられ、悪意のこもった言葉はさらに悪意のある売り言葉買い言葉となり……といった具合に。 そうした流れに乗り、「煽る」ことは実に容易です。あの東大仏文科出身者の言動をこのたび追ってみて実感しました。...
View Articleシャンタル・ムフ『政治的なものについて 闘技的民主主義と多元主義的グローバル秩序』(購入予定)
副題の「多元主義的グローバル秩序」のあたりに惹かれました。要熟読です。 正直、ラクラウとムフの共著を読んで、少しムフ熱が冷めつつありますが。 夫婦漫才じゃあるまいし、ラクラウ=ムフなんてユニット名自体どうなのかと。 エルネスト・ラクラウについてはその一冊を読んだだけなのですが、ありがちな左派という印象しか受けませんでした。ムフとは比べ物になりません。...
View Articleしかし吉本隆明って人は
小林秀雄がさんざんナチスや特別攻撃隊を賛美し、煽っていたことは前にも書きましたが。 戦後の吉本隆明という評論家は、「戦争中、小林秀雄の熱心な読者であった」と自称しつつ、その小林を戦争への抵抗者であるかのごとく讃え。 1980年代には、反核運動や反原発運動に反対し。 オウム真理教の麻原教祖を最高の仏教者と讃え、地下鉄サリン事件後すらも擁護を続け。...
View Article黒田翔大「電話社会のディストピア : 星新一『声の網』に描かれた未来社会」
日本文学における電話を研究なさっている、黒田翔大氏の最新の論文。 しかも星新一。これは読むしかありません。...
View Article小林秀雄語録―なぜ戦争は起きたのか
終戦記念日からは一日ずれてしまいましたが。 戦争の被害を語り継ぐだけでは、戦争を止めることはできない、というのが私の信念です。戦争の加害者、戦争で得をした人を徹底的に調べ上げなければ。 その一端として、小林秀雄という批評家の戦前・戦中語録を。「林」とあるのは林房雄という、小林が戦時中にやたら持ち上げていた(そして戦後はまったく言及しなくなった)無名作家です。 ※ 林...
View Article敵と共存するための倫理に向けて
小林秀雄を調べている関係上、「近代の超克」などという、ご大層な名前の座談会の記録も読んでみたのですが、その名にふさわしい知性ある言葉にはついに出会えませんでした。超克どころか逆行です。 本当の意味で、近代(おおざっぱにいうと、戦争と経済競争の時代)を超える思想があるとすれば、それは「敵と共存するための倫理」あたりだと思うのですが、いかがでしょうか。...
View Article敵と共存する倫理と構造主義
ウラジミール・プロップという学者は、大量のロシア昔話を収集・分析し、構造主義の祖と言われるお人ですが。 「イワンは悪い魔女と平和的に共存する道を選びました。めでたしめでたし」 なんてのは、彼のコレクションにもないんじゃないかと思います。めでたくないし。敵対者は主人公や助力者によって最後には退治されるというのが、プロップが発見した昔話の主要なパターンです。 一方、世界平和ですが、...
View Articleシャンタル・ムフ『政治的なものについて 闘技的民主主義と多元主義的グローバル秩序の構築』明石書店 二〇〇八
「政治的なもの」(”The political")の本質は何か。ムフによればずばり「敵対性」です。 それを忘れた政治談議が甘っちょろいのみならず、危険でもあることをムフは再三に及んで批判します(実は吉野家コピペ風に書こうと思ったのですが、今時通じないと思ってやめました)。...
View Articleしかしムフといえども
ポスト・マルクス主義とかいってマルクスに未練を残したり、フロイトやグラムシを援用したりするのはあまり感心しません。そういう過去思想とは縁を切ったほうが、より遠くへ飛べると思うのですが、こんな日本語ブログでそんなこと言ってたってムフに通じるわけもなし。
View Articleギレンの野望 ジオン独立戦争記
「貴様が総帥だ」でおなじみ、ギレンの野望シリーズ。機動戦士ガンダムの悪役ギレン総帥か、地球連邦軍のレビル将軍のどちらかとなって、地球圏を統一するPS2ゲームです。...
View Articleなつやすみのとも
子供の頃はこの時期に必ずあたふたしていたものです。 現在は外部からの締め切りはありませんが、明日には宿題を片付けようと思います。 「反戦文学論序説」だか「反戦文学を読むための方法論」だか、とにかく方向性を定めねば。
View Article反戦文学論の見通し
わが反戦文学論の眼目は、「何によって戦争を阻止するか」といったところになりそうです。 与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」には、それが欠けていました。手放しで賞賛できないゆえんです。 日本で最初に「平和主義」という語を用いた矢野龍渓は、小説『経国美談』中で架空の国際平和会議を描きました。しかしそれは現実の国連等と同様に、戦争を阻止するための軍事力を認めるものでした。...
View Articleいっぽう戦後は……。
戦前の平和主義者たちの中には荒唐無稽なものもありますが、少なくともバラエティに富んでいたことは確かだと思います。 いっぽう昭和戦後を見ると。戦争の悲惨さを語り継ぐのはいいのですが、「その先」をめざす平和論が欠けていたことは否めません。戦争を阻止するために何が必要かを考えてこなかったことは。...
View Article戦後SFから三つほど。
戦後日本にも、「何によって戦争を阻止するか」という問題に自覚的だった文学者はいました。 ぱっと思いつく限りで、SF的作品を三つほど。普通は反戦小説とは呼ばれない作品です。...
View Articleいまどき私小説批判でもありませんが。
「小説家を書く小説」なんてのは一見魅力的に見えても、ネタ切れ・自家中毒になりやすいものでして、「小説の書けぬ小説家」的な話になりかねないものです。村井弦斎の「小説家」(1890~91)は、明治前期にしてはがんばったメタフィクションですが、それでも後半はたるみ感が否めませんでした。 反戦・非戦小説についても同じことが言えそうでして。 「何によって戦争を阻止する?」 「小説で!」...
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