心脳問題と星一『三十年後』
『三十年後』についてはこのブログでもあれこれ書いてきたのですが、1エピソードにすぎない軍備廃絶論にこだわるあまり、全体像をつかみそこねていた気がします。 「心と脳」といった観点から、もう少しまとまった論文を書きたくなってきたのですが…まったく未知の分野なので、入門書から少しずつ入っていこうと思います。 とりあえず、現時点での私は素朴な心脳二元論です。
View Articleまぎらわしい誤字には気をつけよう
先ほど、「信奉者」のつもりで打った箇所が「新報社」になってたので直しました。 誤字だとはっきりわかるならまだいいのですが、「新報社」という会社があるのかな、と思われるようなまぎらわしい誤字は困るわけです(現に「新報知社」は実在します)。そういう誤字がいくつも重なると、文脈そのものが崩壊しかねないので…次回からは見直してから送信します。
View Article水本正晴「ゾンビの可能性」(『科学哲学』 2006)
心と脳の問題について調べはじめると、チャルマーズのゾンビ論法は避けて通れない話題のようです。 ここでいうゾンビ(水本論のいう機能的ゾンビ)とはモンスターのたぐいではなく、人間とまったく同じ身体・頭脳を持ちながら、クオリア(感覚質。いわゆる「感じ」)をもたない存在、を想定しています。ゾンビというよりレプリカといったほうが適切かもしれませんが、慣習らしいので以後もゾンビで。...
View Article軍備縮小同志会『軍備縮小講演集 第1輯』(1922) より 香川豊彦「軍備の撤廃せらるまで」
また少し、軍備廃絶論の話に戻ります。香川豊彦と尾崎行雄による、軍備縮小を訴える講演集です。 今回は香川の「軍備の撤廃せらるまで」を紹介します。のっけから縮小ではなく撤廃。とばしてます。 大正11年という時代背景もあり、第一次世界大戦の惨禍、クロポトキンなどの進化論者からみた戦争の非などが豊富な事例とともに語られます。...
View Article軍備縮小同志会『軍備縮小講演集 第1輯』(1922) より 尾崎行雄「華盛頓会議と軍備制限」
ワシントン会議を背景とする、世界的な軍備縮小の空気の紹介。国際世論の要求と国家予算の限界の両面から、軍費制限の必要性を論じています。香川豊彦と違い、こちらは軍備撤廃にまでは踏み込んでいません。 もう一つの論点は、空中軍をはじめとする新式兵器への危惧。 ※...
View Article与謝野晶子『人間礼拝』(1921)より 「尾崎行雄氏の軍備縮小論」
文学者の側からの、軍備縮小論が見つかりました。知ってる方には常識だったかもしれませんが、与謝野晶子の感想集『人間礼拝』より。 尾崎行雄の軍縮案は、衆議院内では島田三郎以下三十数人の支持を得たのみだが、その背後には選挙権を持たない大多数男子と女子国民の味方がある、そのことを海外の人々も知ってほしいとの趣旨です。...
View Article姜 克實「尾崎行雄と軍備縮小同志会」
『岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要』第38号(2014.11)。ネット上で入手できました。 1922年以降の尾崎行雄ら軍備縮小同志会の演説内容とその影響が詳細にまとめられています。 賀川豊彦ら文学者・絶対平和主義者との差異も、かなり明らかになった気がします。もともと同床異夢だったのかもしれませんが、一時のブームで片付けるには惜しい問題でもあります。
View Article賀川豊彦「空中征服」の結末中の一節
1922(大正11)年。つまり軍備縮小同志会での活動と同時期に書かれた、星一の『三十年後』にも似た未来空想SFです。 その結末、私設裁判で処刑されつつある賀川豊彦(主人公)に、魂の賀川豊彦が述べる弔辞。 ※...
View Article「空中征服」中の、太閤と大塩のレニン(レーニン)評
賀川豊彦の空想小説『空中征服』の一場面で、大気汚染に苦しむ大阪を救うため復活した太閤と大塩平八郎。幕府への反逆者だった大塩が「ようレニン!」と冷やかされるのはまだわかりますが、意外にも太閤も、レニンの電化政策には好意的です。青空文庫より。 ※ 「大塩君。そんな煙筒の掃除日といったような、ケチなことをやらさないで、断然このさい大阪市の全動力の電力化を考えなくちゃ駄目だぜ!...
View Article『空中征服』中のマルクス主義への疑問
「マルクスを尊ばず」の一例として。 ※ 何かもう少し強い真理の世界に掘り下げねばならぬと、彼は考えた。 すべての社会運動は果して何の上に立っているか? マルクス社会主義者は「唯物的生産の上に」と言うであろう。しかし、その物質的生産は何のためであるか、それは要するに生きるためではないか! そして生きるのは何のために生きるのか?...
View Article社会主義ーソビエト権力=?
レーニンは「共産主義とは、ソビエト権力プラス全土の電化である」という言を残しています。 そういう式でいうと、「『空中征服』のテーマは、社会主義マイナスソビエト権力である」と、とりあえずは言えるでしょう。 ただ、オール電化(死語だな)の未来を単純に礼賛する小説でもないようです。レーニンのいうマルクス的共産主義と、賀川のユートピア的社会主義はイコールではないので。
View Article賀川豊彦『空中征服』を三行で要約すると
大阪市の市長に就任した「賀川豊彦」氏は、大気汚染の問題を電力化等の政策で解決しようと試みるがことごとく失敗する。新発明の気体力学による空中住宅・空中田園への移住計画はうまく行きかけたが、軍による空中村砲撃によってまたも失敗する。「魂の(あるいは現在の)賀川豊彦」が空中移民を率いて光線列車で火星へと移住していく一方、「肉の(あるいは五時間前の)賀川豊彦」市長は騒乱の首謀者とされて処刑される…。...
View Article賀川豊彦『空中征服』より 光線列車
今までマルクス批判の箇所ばかり引用してしまいましたが、やぼな話ばかりではなく、想像力の飛躍に満ちた場面も『空中征服』には多々あります。その一か所、火星への移住場面を。 ※...
View Article賀川豊彦『空中征服』より 蟹の無傷害主義
人間社会に倦み、川底の自然世界に隠遁した賀川豊彦市長。しかしそこも、党派や闘争と無縁の地ではありませんでした。鋏と甲羅で武装した恐ろし気な蟹から、意外にも聞かされる軍備縮小論。 ※ 蟹は涙を流して、自己の不運を嘆いた。蟹の虜となりながら、蟹の話しをきかされると同じように彼も悲しくなった。「君は無抵抗主義か? 」...
View Article賀川豊彦「星より星への通路」(1921)
『空中征服』中の光線列車の原型ともいうべき散文詩を見つけました。単行本『星より星への通路』(1922)巻頭収録です。 監獄に囚われた主人公が、瞑想の内に地球を超え、木星・火星・ヘラクルス星座等の旅に出るという展開です。バローズの火星シリーズ第一作は1912年ですが、影響があったかどうか。調べてみたいものです。
View Article賀川豊彦『空中征服』 より 水力発電
煙害撲滅をめざす賀川市長への、当然といえば当然の反論。 ※ 「おい、賀川、貴様は大阪市の煙筒から煙が少しも出ないようにすると言うじゃないか、いったいそんなことが出来ることか、出来ないことか、やってみるがよい! 煙が出なければどうして機械を回すんだい? 」「電気で回せばよいじゃないか! 」「その電気がさ! 煙が立たなければ起らんではないか! 」「水力で起るじゃないか!...
View Article渡辺 弘「大阪市に於ける大気汚染の実態」
『生活衛生』 1(1), 24-29, 1957。Ciniiにて閲覧可能。 こういう論文が欲しかった!と思いきや、グラフに載っているのは昭和3年以降でした。 「大正時代の大阪市における大気汚染の実態」なんて都合のいいデータは、そう簡単には見つからないようです。
View ArticleCiniiで「空中征服」を検索したら
Ciniiで今月号の雑誌が出るというのも珍しい話です。幸先よさそうです。 ※ 近代日本奇想小説史 大正・昭和篇(第20回)空中征服から豪華連作小説まで 横田 順彌 SFマガジン 56(3), 316-329, 2015-04 日本大衆文学のSF的展開--賀川豊彦「空中征服」の一考察 (大衆文学--物語のアルケオロジ-<特集>) -- (大衆文学への視点) 由良 君美 国文学...
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