大東亜文学者決戦会議のあった1943(昭和18)年9月10日に、永井荷風は何をしていたのか。気になって読んでみましが、一言も触れていませんでした。セミが鳴いたとか落ちてたイチジクを食べたとか。同会議の存在自体知らなかったか、少なくとも関心がなかったようです。
ただ、その前日には注目の記事が。
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九月九日。 (略)上野動物園の猛獣はこの程毒殺せられたり。帝都修羅の巷となるべきことを予期せしが為なりと云。夕刊紙に伊太利亞政府無条件にて英米軍に降伏せし事を載す。秘密にしては居られぬ為なるべし。
(永井荷風『断腸亭日乗』岩波書店 昭和56 379~380ページ 旧字体は新字体に改めた)
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『かわいそうなぞう』の話は、子供の頃絵本で読み、今も記憶に残っています。
そしてイタリアの無条件降伏。こういう背景を知ると、あの会議での小林秀雄らの発言が実にそらぞらしく感じられます。