蜷川新右衛門の子孫(?)、法学博士蜷川新の論、「絶対的平和主義は望みなし」。
特集「軍国主義か平和主義か」の論者三人の中でただ一人平和主義を完全否定する論なのですが。
正直なところ、商会主や陸軍中将の論に比べてはるかに非論理的・非現実的です。
平和主義を望みなしとし、日本は軍国主義を取るべしと主張する、以下の論拠をご覧ください。
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仮りに世界の大国が戦後合意して兵備を全廃したとしたらば如何乎(どうか)、日本は之れに加入せずに、依然として軍国主義を取つたとすれば、世界の征服は、日本人の手で易す易すと出来上がり、其の以後には国内警備の警官のみを以て済む様になるであらう、是れ誠に賀す可き事であつて、戦後(引用者注 第一次世界大戦の終結後)日本は斯る場合ありとし、依然軍国主義を取る可しと主張せざるを得ぬ。
『実業之日本』1918年1月号特集「軍国主義か平和主義か」(16ページ)
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大まじめに世界征服を考える博士なんてものが、現実の大正時代にいるとは思いませんでした。
上記は極端なたとえ話か、ギャグで言ってるんじゃないかと思われるかもしれませんが、それ以外の箇所を見てもこんな調子で、学者としての誠実さは感じられません。こういう軽率な発言が日本の国益を損ねることを想像できないのでしょうか。まともに戦後の国際秩序のため努力している日本人も大勢いたというのに。
唯一の収穫は、第一次大戦期(1918(大正7)年)の日本に、「絶対的平和主義」という言葉が存在し、それを支持する人が一定数でいたと裏付けてくれたことぐらいでしょうか。