武者小路実篤の自伝より。
幼少期には弦斎の『小猫』『飛乗太郎』を愛読したという話も出てきますが、平和主義方面ではこちらも。
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木下尚江の「火の柱」は兄も愛読したが、兄からすすめられて僕も読んで感動した。「良人の自白」はそれについで感心したが、その後のものは期待しただけ失望した。尚江の演説も二、三度聞いたが、情熱があって、興奮して聞いたものだ。
(略)
木下尚江が好きだったとき、ある日同氏を訪問する気になって一人で出かけてみた。しかし家を捜すことの下手な僕は、ずい分歩いてみたが、とうとう見つからなかった。小一時間は木下尚江の住んでいる町をうろついていたと思う。しかし見つからないで失望したと同時に、あわない方がいいので、見つからなかったのだというような気もして、その後訪問する気はしなかった。
(542ページ)
(略)
木下尚江が好きだったとき、ある日同氏を訪問する気になって一人で出かけてみた。しかし家を捜すことの下手な僕は、ずい分歩いてみたが、とうとう見つからなかった。小一時間は木下尚江の住んでいる町をうろついていたと思う。しかし見つからないで失望したと同時に、あわない方がいいので、見つからなかったのだというような気もして、その後訪問する気はしなかった。
(542ページ)
(武者小路実篤「自分の歩いた道」(1956(昭和31)
引用は小学館『武者小路実篤全集 第十五巻』1990より)
引用は小学館『武者小路実篤全集 第十五巻』1990より)
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…ポジティブ実篤とネガティブ尚江。出会ってはいけない二人が…糸色望先生みたいだな。