『東方見聞録』に描かれた元寇
「さて、クビライ・カーンはこの島の豊かさを聞かされてこれを征服しようと思い」(月村辰雄・久保田勝一訳『マルコ・ポーロ 東方見聞録』(岩波書店 2012 198ページ))で始まる日本遠征記。けっこう長いので箇条書きで。 ・二人の将軍による渡海。平野と村落を占領。 ・凄まじい北風。軍隊の大部分が滅ぶ。三万の生存者が小島に漂着。 ・サパング(日本)の舟が小島を攻める。...
View Article探し物は
物理的にコピー用紙が見つからないのもありますが、それ以上に答えが見つからないのもあります。 たとえば村井弦斎研究にしても、弦斎の潜在力を私の研究は完全に引き出せているかどうか。
View Article山本昭宏『核と日本人』(中公新書 2015)
「筆者の研究の動機を遡れば、大江健三郎に行き着く」という、1984年生まれの若い著者による、戦後文化の中の原子力言説を概観した新書です。「ヒロシマ・フクシマ・ゴジラ」との副題あり。...
View Article私の2011年3月11日
思えばかすり傷一つ受けたわけでもなく、金銭的な被害もなかったので、被災体験ともいえないわけですが、ふと思い出したので、当時の印象のみ書いてみます。己の甘さへの戒めとして。...
View Article『肉弾』中の胃吉と腸蔵
兵士の生の心理を知りたくて、『明治戦争文学集』を読んでいたら、桜井忠温『肉弾』の野営場面で、「山海の珍味よりも難有しと戴いた大事の握飯、胃吉、腸蔵の喜ぶ暇も無く」との一節がありました。 村井弦斎『食道楽』を読んだ方ならおわかりでしょうが、冒頭の「腹中の新年」に出てくる、あの食の妖精(?)の名前です。桜井中尉殿も読んでいたか。
View Article村井弦斎『食道楽』第一「腹中の新年」
今さらながら、『食道楽』(1903(明治36)年)の冒頭場面を。 ※ 腹の中にて新年を祝する胃吉と腸蔵 「オイ胃吉さん、おめでとう」 胃吉「ヤアこれは腸蔵さん、去年中は色々お世話さまでしたね。また相変わりませずか、アハハ。時に腸蔵さん、今日は正月の元旦といって一年に一度の日だからお互いに少し楽をしたいね。私たち位年中忙しくってみじめなものはないぜ」...
View Article三笠の巻
横須賀に行ってきました。めあては記念艦三笠です。JR横須賀駅から30分ほど歩きました。 予想していたよりはだいぶ小さい気がしましたが、艦内の展示品は充実してました。新旧連合艦隊の模型がずらーっと並び、バルチック艦隊のも。水上機を見て、「これ、どうやって着艦すんだ」と言ってる人がいたのが印象に残ります。実は私もあやふやです。海上からクレーンで引き揚げるんでしょうか。...
View Article「満洲新聞」所載三篇再録
『すばる』2015年2月号に掲載された、新発見の小林秀雄三篇、やっと入手しました。 「歴史に就いて」「北京だより」「事変の新しさ」の三篇です。 よく知られている「歴史について」や「事変の新しさ」とあまり変わらないように見えますが、土日にじっくり読もうかと思います。
View Article小林秀雄「歴史に就いて」(『満洲新聞』1938年11月29日~12月3日)
『すばる』2015年2月号掲載文より要約。 (一) 歴史は決して二度繰り返さない。母親にとっての子供の死と同じように。 (二) 「歴史は繰り返す」という言葉は、歴史家の合理的な解釈にすぎない。 (三) どんなに客観的であろうと努めても、歴史観というものは結局主観である。 (四) ニイチェは歴史を科学にしようとする人々を歴史病と呼んだ。歴史は生きて始めて知るものだ。...
View Article小林秀雄「北京だより」(『満洲新聞』1938年11月29日)
『すばる』2015年2月号掲載文より箇条書きで要約。 ・清朝のデカダンスの遺物にはただもうあきれるばかりです。 ・こまごました宝物には少しも美しさがありません。 ・承徳のラマ寺には全く感心しました。 ・北京にはあの程度の強いものも恐らくありますまい。
View Article小林秀雄「事変の新しさ」(『満洲新聞』1940年8月27日~8月31日)
『すばる』2015年2月号掲載文より抜粋要約。 (一) 政治家には非常時の政策というものがあるが、文学者には非常時の思想などない。 (二) 文学者は表現がすべてであり、「表現は拙いが内容はいい」などということはない。 (三) 政治家が歴史の表面に現れた事変を大事にするが、文学者は歴史の底(伝統)に眼をつける。 (四) 「汝自身を知れ」。己の才能の限界を知り、謙遜になること。 (五)...
View Article村井弦斎の絶対平和主義宣言(初出より)
前に紹介した時は改造社の現代日本文学全集版(1928(昭和3)年)でした。今回は『婦人世界』1918(大正7)年5月号の初出版で。星一『三十年後』とほぼ同時期で、新聞の同じ面に広告が出てたりもする小説です。 ※ 「小夜子さん、復(ま)たしても妙な世界観を言出すやうですが、何卒(どうぞ)公平に僕の意見を批評して下さい、元来今の世の文明と(引用者注...
View Article「バガヴァッド・ギーター」 その2
開戦直前に敵を殺すのが嫌になったアルジュナへの、クリシュナの答え編。 ※ 汝は嘆く要のない者について嘆いた。 しかも思慮あるような言葉を語る。 死者のことをも生者のことをも、 識見ある人は嘆きはしない。 「バガヴァッド・ギーター」『ヴェーダ アヴェスター』(筑摩書房 1967) ※...
View Article