『フローベール全集 1 ボヴァリー夫人』(筑摩書房 1965)
実はヤウスの言ってることがどうも腑に落ちなくて読んでみました。 『ボヴァリー夫人』(伊吹武彦訳)も再読しましたが、お目当ては附録の裁判記録のほうです。 ピナール検事の論告(沢田閏(正確には門がまえの中に壬)訳)は以下のごとく結ばれていました。 ※ この道徳(引用者注...
View Article星一 述『自国を知れ 進歩と協力』(1933) より 「飛行機上より見て」
どうも昭和戦前期の星一には神がかり的なところがあって、この口述本も「生産の神国化 分配の神国化」とか大々的に謳っているわけですが、中にはさすがと思わされるところもあります。 ※ 八 飛行機上より見て 一私は地上に於て自己を発見した、飛行機に乗つて人間を発見したと云ふて居る。子供 の時に、神様は天に居ると云ふから、高く雲の上に居るものと思ふて、どうかしてあ...
View Article星一はラッセルを読んでいた
星新一のエッセイにもあったのですが、星一は『官吏学』全4巻という、膨大な分量の学術書を書き残していました。 ひとまずその『摘要』だけでも思って読んでみたら、さっそくラッセルの名が出てきました。平和主義がらみではありませんが、後々役に立ちそうです。
View Articleああはなりたくない人
「ああなりたい人」は少なく、「ああはなりたくない人」は多いのが現実。 「ああはなりたくない人」も反面教師としては必要ですが、そういう人を見慣れてけちをつける癖がつくと、つい向上心を失ってしまうものです。 『ジョジョの奇妙な冒険』の冒頭にありました。囚人のうち一人は泥を見、もう一人は星を見ていたと。できれば星を見ていたいものです。
View Article江見水蔭『空中花 前編』(1918)
トンネルはないけど国境は雪国だった。越後と信濃の境の駅を前にして、大雪のために立ち往生してしまった汽車。そこに乗り合わせた美少女とその父、貴婦人と書生、いわくありげな怪老賊。汽車を捨てて徒歩で駅を目指す、彼らの運命の交差が始まる…。 いかにも大時代な娯楽長篇といった、江見水蔭の三部作の冒頭です。...
View Article気を取り直して
思い返してみると、『空中の人』もそんなに悪くはないような気がしてきました。 悪いのは江見水蔭ではなく、私の焦りのほうです。もうちょい落ち着いたら更新を再開してみます。
View Article星一「三十年後に題す」
『三十年後』の序文に、後藤新平が星製薬を訪ねた際の挿話が記されています。 後藤が店員に「馬鹿につける薬はあるか」と聞いたところ、「目下研究中でございます」と返され、星製薬の面目を施したと。星新一『明治の人物誌』後藤新平編にも引用されています。 一場の座興といえばそれまでですが、わざわざ序文に書いたことでもあるし、案外、星一にとっては切実な話だったのかもしれません。...
View Article江見水蔭「太古の戦争」(『欧州戦争実記』1916年7月号)
『三十年後』の軍備廃絶論は星一の思想であって、江見水蔭のではなかった、そう裏づけてくれる資料です。 ※ 戦争は何(いつ)の世にも有る。適者生存の為には戦争は如何(どう)しても免れぬ。 (略。三千年前のアイヌまたはコロポックルが、強健な大和民族に滅ぼされたのは当然の結果だと論じた上で)...
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